啓の家は、僕の家から少し東に向かったところにある。
徒歩で10分位でつく。
茶色屋根の、大きな一軒家なんだ。
啓の家には何度もお邪魔したことがある。
表札には綺麗な字で、[河村]と書いてある。
それは、啓の家なんだから当たり前のこと。
なんて考えながら、チャイムを押す。
二回程、チャイムを押すとすぐに声が聞こえてきた。それと同時に、隣の家の犬が吠えだした。
「はーい。どちら様ですか??」
この声は、啓のお母さんだ。
啓のお母さんは、そういうと外に出てきてくれた、
名前までは覚えていない。
たしか名前のどこかに[美]という字が入っていたはず。
「あの、光です。片切光です。啓は………。」
あぁ!と驚いた顔をしたかと思えばすぐに、
「啓―!!光くんが来たわよ!!降りてきなさい!!」
なんて大きな声だろう。
外から叫んで、二階にいる啓に聞こえるんだから、すごいものだ。

そしてしばらくしてから、啓が出てきた。
「…??」
「あぁ、紹介し忘れたな。コイツは、[真辺悟(まなべさとる)]。隣のクラスの俺の友達♪」
啓がそういうと、悟と名乗る男がペコリと頭を下げた。
そして、ニッコリ笑ってこう言った。
「真辺悟ですっ!よろしく!!俺のことは悟って呼んで♪」
あぁ、このテンション。
僕の苦手なタイプだ。
「僕は、[片切光(かたぎりひかる)]。よろしく。」
それだけ告げて、僕らは歩きだした。
カフェに向かって…―――
早く、[糸瀬瑠璃]に………逢いたいと思った。