-平成28年、3月某日

私、花崎亜衣(はなさきあい)の背後に気配を感じた。
頭に危険信号が送られて、足が震えていた。

こういう時には、音楽を聞けば!と、馬鹿な考えを実践し、猛ダッシュで逃げる。
完璧な作戦だ。



たったったっ、とコンクリートを蹴る音が2つ。
ダメだろ?こういう時にはちゃんと追いつかないってのが当たり前なんだって!


「うぉーー!」
と奇声を発する高校2年生。

それを追いかける成人(?)男性。



こう見えても私は陸上部No.3に入る大物なので、老若男女問わずに逃げ切れる。



あのストーカーの顔は、黒いパーカーで見えなくなっている。
でも体つき的には男性。可愛い系かな?

あと数十mで家に着く。
それからお父さんを呼んで追っ払ってもらおう。
お母さんはハエたたきでいっか。



「もっと!あづぐ!なぁれよぉー!」

「あっ!ちょっと、待ってくだぁあ!」

バタッ-
これは…

彼、いや彼女は思いっきり地面に伏せた。
手には私のハンカチが握られていて、ビクビクと震えている。

なんか…すいやせんした…
そんな反省で頭がパンクする。



私は彼女の頭をぽんぽんと叩いていた。
見たところ私より小さいので、私と同じ年だろう。

私は平均以上に背が高いからな…



とりあえず行動を起こそう。
私は彼女をおんぶする。
あ、軽い(確信的)

これが、私を底辺へと落とす罠だったとかもしれない。