とりまきface

 遥人の唇が離れ、菜々の耳元で囁いた。


「菜々が好きだ…… 菜々は?」


「部長……」


「部長はみんなのもの…… 菜々の前にいるのは誰?」


「白石遥人さん……」


「フルネームで言わなくても…… 遥人でいいよ。で、菜々は?」


 遥人の目にぐっと見つめられ、逃げ場を失った……


「遥人が好きです……」


 菜々の潤んだ目に、遥人の顔はかぁ―っと赤くなった。



 そして、遥人は菜々を強く抱きしめた。


 菜々は、思ってもいなかった遥人の胸の中で幸せ過ぎて……




 でも、すべて遥人に流されてるようで悔しい……


「ねぇ、遥人……」


「何?」


「遥人、私のとりまきになるのよね?」


「うん……」


「じゃあ、私が他のとりまきの誘いに乗ってもいいって事よね?」


「えっ」

 遥人の顔が、クールな表情に変わった。


「それは、絶対にダメだ!」


 菜々はニヤリと遥人を見た。


 菜々の顔を見た遥人は、菜々の頭の後ろに手をあて、もう一度唇を奪った。


 遥人の唇は、どんどんと深く菜々の唇を奪っていく……



 又、新たな機体が滑走路に入る…… 

 大きなエンジン音が、二人の体に響きわたっていく……

 しかし、二人は機体に目を向けず、唇を重ね合わせていった……




 とりまきも、真っ直ぐに相手を想っていれば、振り向いてもらえるものなんだ……


 きっと大切なのは、好きということ、なんだろう……


     「完」