「そ、そんな事言える訳ないじゃないですか……」


「だいじょうぶ、ほれ、ほれ言ってみ? 全て解決するから……」


 遥人はニヤリと菜々を見た。


「ぶ、部長、そういう人だったんですか?」


「そうだよ。仕事の顔はクールに、それも俺だし。好きな子の前ではこうなる、それも俺。嫌?」


「そうじゃないけど…… ついて行けない……」


「菜々だって、そうじゃん。美人でキツイ顔してんのに、実は優しくて男に慣れてない」


「ちょ、ちょっと…… て、言うかなんで呼び捨てなんですか!」



「全く、頑固だな……」



 その時、ライトの光る滑走路から大きな音と共に、機体が上がり出した。


 菜々が滑走路に目を向けた途端、菜々の唇が遥人の唇に塞がれた。



 柔らかくて優しい唇に菜々の力は抜けていき、持っていたコーヒーカップがガサッと落ちた……