しかし、発表会は目前に迫り、慌ただしく菜々と顔を合わせる間も無い。


 最終の新商品の会議から戻ると、オフィスのただ事でない動きに嫌な予感がした。


「部長! 大変です!」

 部下の時田が慌ただしく駆け寄ってきた。


「どうしたんだ?」


「工場への手配の数の訂正が出来てなかったんです」


「ええっ。だってあれだけ確認したのに……」


「それが……」

 時田は言いにくそうに、亜美の方を見た。


「はっきり言え!」


「山口さんが、訂正の数を送ったらしいんですけど、何か手違いがあったみたいで……」


 遥人が亜美の方を見る悔しそうに涙をこらえている。

 その様子を、影から見ているとりまき社員の姿があった。


 そういう事か……


「それで、今どういう状況だ……」


「各工場に手分けで向かって状況確認しています」


「多分、最終の組み立てが間に合わないみたいで、桜井さんが行きました」


「分かった。俺も行く!」


 遥人は、慌てて鞄を持つとオフィスを飛び出した