振り向いた時、見えた隼の顔が浮かぶ。

あんなに一瞬だったのに。


よくもまぁこんなに頭に焼き付く事。


他人事のように思えてきた。



私は下駄箱へ着くと、すぐに靴へ履き替えて昇降口を出ようとした。


「優衣っ!」


だけど隼に捕まってしまった。

隼の大きな手が私の腕を力強く掴む。


「……痛い」


私は隼を見ずに言った。


「…ああ、悪い」


隼はそう言って力を緩めたが、離してはくれなかった。


「……何か用?」


わざと冷たく言う。

……だってもう、私と隼は他人だもん。

何も、関係ないもん………。


「何か用って……」


隼困ってる……

私が困らせてるんだけど。


「……あれ?優衣ちゃんに隼?」


するとそこに、場違いな声が。


「駿……」

「駿くん…」


なんでこんな時に……

「どうしたの?」

どうしたの、って…

………こーゆー状況だよ。


「隼、手離したら?
優衣ちゃん痛そうだよ」


駿くんがそう言うと、隼は大人しく私から手を離した。


「……優衣ちゃん、帰ろ」


すると今度は駿くんが私の手を掴んで歩き始めた。

「へっ?」

思わず声が出る。

「じゃあね、隼」

駿くんは隼に笑顔で手を振っている。

隼をみると、俯いていて表情が見えない……




なにこの状況……





そのまま駿くんに手を引かれ歩いていると、隼はどんどん小さくなりついに見えなくなってしまった。