「優衣?」



そしてやっぱりこういう時に現れるのはずるい。


「……隼?」


少し離れたところの暗闇からだんだん近づいてくる。


「どうしたの?こんな所で」


隼の顔を見たら見たで何故か安心のようなものを感じてまた涙が出てきてしまった。

「えっ、優衣?」


隼はそんな私をみてぎょっとすると駆け寄ってきてそのまま優しく抱きしめてくれた。


そんな隼の背中に腕を回す。

ぎゅっと、きつく、いなくならないように。


隼は私の頭を優しく撫でる。


「どうしたの?」


隼の言葉はストンと私の中に落ちる。


「ん……」


なんて説明したらいいのだろう……

「言いたくないなら大丈夫だよ、」

そういうわけじゃないの……

言葉に詰まる。


「ゆっくりでいい」


隼の言葉に顔を上げると、困ったように笑っていた。

違うよ、こんな顔させたかったんじゃない。

ごめん、ごめんね隼。

急に現れて急に泣いて……

「ごめんね、迷惑ばっかりかけて…」


私がそう呟くと、私の頭を撫でていた隼の手はとまり、そのまま私の手に降りてきた。

そして私の手をぎゅっと握って視線を私にあわせてくれた。

「迷惑なんかじゃないから、大丈夫。
俺でよければなんでも言って?
どんな言葉でもどんな事でも受け止める自信あるから、信じて」


そう言った隼の言葉には優しさしか詰まっていなかった。


「あのね…………」





すると私の口はポツリポツリとお父さんの浮気の経緯やさっきまでお母さんと話していた内容を話し始めた。


その間、隼はずっと私の手を握っていてくれた。