「あ、あの子じゃない?」

「ほんとだかわいい~!」

「予想以上」

するとこちらを指さして騒ぐ女の子たち。

あぁ……学園祭だもんな。

自分で言うことじゃないが、他校の人に名前や顔を知らないうちに知られている事がよくある。

去年の学園祭もこうやって遠目で声をあげられていたりした。

また他校の学園祭に行っても似たようなことがあったりもした。

つまり私は私が知らない人にまで私の存在が伝わっているという状況におかれているのだ。


まぁ恐らく悪い意味ではなさそうだからそこまで気にしてはいないし悪い気はしない。

ただ少し、怖いなと思う。

世間は狭くてどこでだれと何があるかわからないからね。


「優衣に近寄る男は私が排除するから任せてね」


何故か意気込む花音の隣で私は少しため息をついた。


「大丈夫だよ、こういうの毎年あるし1回も声かけられたことないじゃん」

「な、忘れたというのか優衣!!」

私が呆れたように言うとまた呆れたように花音が言う。

「忘れた?」

って何を?

私の記憶だと声はかけられたことないはず……


「高1の時の学園祭で私がちょっと目を離してるすきに声かけられてたじゃん!
金髪の大学生に!」

1年……金髪………


「あぁ!!」


思い出した。


花音がほかの友達と会って話しているのを待っている時、金髪と茶髪の大学生2人組に声をかけられた。

なんだっけな…『学校内わからないから案内して』なんて言われたような……

私も1年生だしよくわかっていなかったから断ったんだけどしつこく迫ってきたんだ。

それで手を掴まれて………


「あの時、助けてくれたの隼くんだったよね?」

花音の言葉に頷く。

そうそう、まだ名前も顔も知らなかった隼が私を助けてくれたんだ。


付き合い始めてから隼に言われて初めて気がついたんだけど……


『俺が案内しましょうか?俺詳しいですよーっ』って隼が私を後ろに隠すようにして言ってくれたんだ。


そしたら大学生たちは冷めたようにどこかへ行ってしまった。


私はてっきり先輩だと思ってたんだけど、まさか隼だったなんてね。


「あれはもう、優衣と隼くんが結ばれる運命だったんだよね……」


花音がとろんとした目で言う。

「言いすぎ!たまたまだよ、きっと」