「ゴラッ!ぼぉっとしてたら噛まれるで!」


山崎さんが狼を追い払うと
私の前の土を掘る


テキパキと火を起こした


「すごーい」



感心していると、ため息交じりに

「死ぬ気か?」


って、聞かれる


「それも、いいですね」


「それも?」


「江戸ってどっちですか?」


「あっち」


「逆か」


「江戸に縁者がおるんか?」


「えんじゃ?」


「知り合いおるんか?ってこと」


「いませんよ」


「まさか…体でも売る気やったんか?」


「手っ取り早いでしょ」


「はぁー帰るとこないのに出てきたんか!」


「山崎さん」


「ん?」


「どーぞお帰り下さい」


「副長から送り届けてこいって言われてる」


「だから、送り届けたって言えば?」


「そんな薄情ちゃうし」


「私のことなんて、信じてないでしょ
ほっとけば?」


「そんなヤケになるな
ちゃんと事情言えばええやん!
せや!女中したらええやん!」


「じょちゅうって、なに?」


「ホンマ何もしらんのやな」


面倒くさそうな目


「山崎さん 帰っていいよ
私…ひとりになりたいし
色々と今後の対策を練るから」


「あかん!」


「邪魔だから!帰って!!」


「いやや!!」