…嘘だ。絶対…嘘だ…。
「お兄ちゃん…これって…」
美沙がそう言いながら指さした先には、
『・野田 快斗 (東京都)』
とある。
「違う!」
反射的に叫んでしまった。
美沙は驚いて縮み上がる。
「あ…ごめん…。あの…きっと、違うよ。確かに俺は東京都在住の野田快斗だけどさ、東京って意外に広いんだぜ?…もうひとり野田快斗がいてもおかしく…ないだろ…?」
言いながら、不安になってきた。
でもいまは、それ以外に何も出来ない。
「そ、そうだよね…」
美沙がそういったきり、2人して黙り込んでしまった。

その沈黙を破ったのは、玄関のチャイムだった。
買い物に出掛けていた母さんが帰ってきたのだろうか?
俺は立ち上がり、玄関に向かった。あとを美沙がついてくる。
施錠されていた鍵を回して開け、ドアを押した。

ガチャ

「ひっ…!」

そこに立っていたのは、白いガスマスクのような面を被り茶色の布を頭からまとった人物だった。

『お前が…野田快斗…だな…?』