中学生のような字を見て、奏汰さんが背中を丸めながら文字を書く姿が浮かんでくる。愛おしくて、悲しい。
家族思いな手紙。だけどね、本当は奏汰さんだって家族と一緒に幸せになれるべきだ。だけどあなたはそれを願いすらしなかった。ただひたすらに私は悔しい。

ふと隣に目を向けて、さらに私は動けなくなる。

「かなでちゃんへ

突然いなくなってしまってすまなかった。
言い訳がましいが、この作戦に参加することは言ってはいけなかったんだ。

あの海が見える高台で、君がいい匂いといった金木犀の香りが、大津島にもしていて、目をつぶると、君の奏でた花のような音色が蘇ってきます。
だから、俺は死ぬのが怖くありません。
君が未来で笑っていたから、安心することが出来たのです。

明日、俺は出撃します。
君からもらったG弦を握って戦います。

俺は君のことをたくさん泣かせてしまいました。
俺が君に会えたように、いつかかなでちゃんにも、笑顔をくれる相手ができるはずです。
これからも、かなでちゃんの人生は続く。
長い人生を、悔いがないように生きてください。

君の幸せを、祈っています。

いつかまた、会えたらいいですね。

ありがとう。


八木奏汰」