「いつもお疲れ様」
小さい頃のように、私は兄にそう伝えた。
彼は驚いたような顔を一瞬だけ浮かべたけれど、
「本当にお疲れって思ってるなら、コンビニでアイス買ってきて」
やっぱりいつも通りだった。
「わかったよ」
今日だけはこいつのいうことを聞いてやろう。
家から歩いて五分ほどのところにあるコンビニエンスストアで、スイカの味のアイスを一本と、兄の一番好きな「ハーゲンダッツ・マカデミアンナッツ味」を一つ購入した。
「またお越しください」
若いアルバイトの挨拶を背に、店から出た。
ちなみにそのアルバイトは、小学校時代の友達のお兄さんだ。
高台にいたときよりも、風が強くなっている。
前髪が崩れないように手で押さえた。
空を見上げると、鈍色の雲がせわしなく動いていて、天気が悪い。
潮くささは相変わらずだし、空気はベタベタしている。
なんだか、あまりいい予感はしない。
とりあえず、早く帰ろう。



