きっと出来ないと思う。 だから、あなたが助けてくれて、本当に嬉しかった。 『役に立てたなら良かった。じゃあ、俺はこれで』 『あ、あのっ!』 軽く会釈をして去ろうとする蛯原くんをあたしは呼び止めた。 彼は足を止めてあたしを見る。 『助けてくれた、お礼!させて下さい!』 あんなことしてもらったのに、お礼しないなんてありえない。 だけど、蛯原くんは遠慮して。 そのまま名前も教えてもらうこともないまま、去ってしまったんだ。 だから、高校の入学式で見つけることができて本当に嬉しかった。