落ち着いてるけど、周りの人にちゃんと聞こえるような通る声。





あたしの代わりに誰かが言ってくれたのだ。






声の方向を見ると、男の人の腕を掴んだ同い年くらいの男の子がいて、乗客の注目を集めていた。








……それが蛯原くんだった。





今とは違うけど、その時は黒縁のメガネをかけていた。





『え〜、なに?痴漢?気持ちわる〜』





『やだー、ありえないんですけど』





蛯原くんに掴まれた男の人をジロジロと見て顔をしかめる女の人たち。





『はっ?お、俺は何もしてねぇよ!お前っ、変な言いがかりつけんなよ!』





『言いがかりじゃなくて、その瞬間を見たから言ってるんですけど』