「楠木、こっち」
「う、うん」
またもや手を引かれ、ちょっとした隙間に入り込む。
かばうようにしてあたしの前に立つ蛯原くん。
そんな蛯原くんは、どこから見てもカッコいい。
……なんだか、嬉しいな。
「いつもはこんなに混んでないよね」
「……そりゃ、いつもはまだ早い電車だしな」
それもそうだね。
あたしはふと、自分の手首を触る。
蛯原くん、あたしの手を引いてくれた。
那智の時以外は今までは触れたことなかったのに。
距離が縮んだ気がしてしまう。
そんなことを考えて口元を緩めていた時、ガタン、と強く揺れた。

