しばしの間沈黙が流れたけど、俺は耐え切れず楠木、と名前を呼んだ。
そして目を合わせるように屈む。
顔を隠すためか、背けようとする楠木の頬に手を添える。
「……沙綾」
愛しさが募り、下の名前で呼ぶ。
「え……っ!」
下の名前で呼ばれ、油断したのを確認した瞬間、俺はそっとキスをした。
「って、呼んでもいい?」
「っっ!」
楠木……沙綾の顔はまた真っ赤になる。
「どっ、どうぞ!って、今……き、キスした、よね」
「したよ。沙綾が俺の方見ようとしないから」
そう言うと、沙綾は嬉しそうな顔をする。
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