でもあたしは……楠木沙綾は、朝学校に着いてから帰るまでの長い時間、一緒に居ることができる。




蛯原くんを見つめることだってできる。





那智にできないことがたくさんある。







だから、別にこのままでも……いいんだ。





「あの、遥くん」





あたしに優しくなくても。




あたし以外に優しくても。






「これから、よろしくお願いします」





……あたしは、蛯原くんと近くに居れるだけで、いいの。






「こちらこそ、お願いします」







これが絶対に叶わない……恋だとしても。




後悔なんてしたくないから。