「はい、終わったよ」
そう声が掛かって、タオルを返してくれる。
「ごめんね、拭いてもらっちゃって」
「……」
「蛯原くん?」
いきなり黙っちゃったけど、どうしたのかな?
「俺は、ごめんより、ありがとうの方がいいな」
そうつぶやいた蛯原くんの表情は、とても優しげで。
「そうだねっ。蛯原くん、ありがとう!」
「どういたしまして。じゃ、俺入ってくる」
そう言って蛯原くんは立ち上がった。
「うん、いってらっしゃい」
あたしはそう言って、温かい気持ちで蛯原くんを見送ったのだった。
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