蛯原くんにも、聞こえないくらいの声の大きさで。 「じゃ、じゃあね!蛯原くん!また……学校でね」 あたしはそう言って微笑んだ。 恥ずかしいことを言ってしまった。 蛯原くんに背を向けたあたしは、真っ赤な顔をしていたと思う。 よかった、すぐに顔を背けることができて。 こんな顔見せらんないよ。 ほんのりと熱を持つ頬を手で押さえながら歩く。 あんなことを言って焦ってしまったあたしは、来た道とは逆の方向に行ってしまっていた。 ……あたしがその間違いに気づいたのは、少し歩いてからのこと。