あたしは、小さな声でそう伝えた。 「何が?」 「騙して、蛯原くんの貴重な時間を潰してしまって……」 頭を下げる。 「蛯原くんの気持ちを蔑ろにしてしまって」 今更謝っても、本当に許してもらえないだろう。 「酷いことして、ごめんなさい」 あたしの言葉を聞いた蛯原くんは、少し黙る。 「……別に俺は、酷いことされたなんて思ってないけど」 え? 「どうして、ですか」 あたし、蛯原くんを騙していたのに。 「え、それ聞きたい?」