話しかけようとしても、運悪く人に呼ばれちゃうし。 目が合ったのに、逸らされちゃうし。 せめて、前みたいに話したいよ。 それ以上の関係を望んだりしないから。 「……楠木?」 やだなぁ、なんか幻聴が聞こえてきた。 あたし重症だよ。 「楠木?だよな?」 「うん……え?」 顔を上げると、そこにはスーツを着た蛯原くんが。 「え、蛯原くん……!?」 「隣、座っていい?」 どうして、ここに? そんな気持ちを抱きながら、あたしはコクコクと頷く。