「もう、蛯原くんには近づきません」





あたしがそう言うと、蛯原くんは軽く頷いた。





「そう。じゃあ……楠木は?俺のことはもう嫌いだろ?」






「……はい。あたしは蛯原くんのこと……嫌いです」







……嘘。





本当は大好き。





嫌いになるなんて絶対にありえない。







「だから、お願いします。お見合い……取り消してください」





ゆっくりと告げた。





悲しい……泣きたいよ。





泣いちゃダメだけど。




こんなこと言いたくなかった。






できれば、沙綾として、蛯原くんとホンモノのお見合いをしたかった。





だけどそれは無理なこと。