「やっぱり、バレちゃいますよね。蛯原くんの言うとおり、あたしは木南那智じゃありません……楠木、沙綾です」
はっきりと伝えた。
こんなつもりじゃなかったのにね。
そんなことを思うけど、蛯原くんはあたしの次の言葉を待ってるのだ。
あたしは、お兄ちゃんの袖をキュッと掴んだ。
「……あたし、本当にバカでした。蛯原くんに嘘ついたって、絶対……振り向いてもらえるはずないのに」
あたしは俯いた。
蛯原くんの顔を見れない。
「こんな嘘ついてしまって、本当にごめんなさい」
今にも逃げ出したかった。
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