できれば、下の名前で呼んでほしいなぁ、なんて思うけど。




でも、それはもう遅くて。





絶対に……叶うことは無いのだ。






ありがとう、蛯原くん。





もう、想いが通じたことだけで幸せだから、これ以上は何も望んじゃいけないね。







……この恋にさよならするよ。










────────────────────────────……





「こんにちは。今日は来ていただき、ありがとうございます」





広い部屋の中で、あたしはニコリと那智の微笑みで応対する。





「こちらこそ、ありがとうございます」





蛯原くんも軽く微笑んで返してくれる。