銃刀法がなくなった!

「おはよう、みのる」
パッチリとした目で仁はみのるを起こした。みのるは口から垂れているよだれをグシグシと拭くと、おはよう、とあくびをしながら言った。
「俺、今日はいつもよりぐっすり眠れたよ。」
と情けないあくび顔に笑いながら仁は言った。
(そうか、昨日は私の部屋で寝たのか。)
まだウトウトしていて意識があまり無かったが、みのるはだんだんと昨日のことを鮮明に思い出してきた。そして、自分の今の格好を見て苦笑いをしている仁を見ると慌てて洗面所へ向かった。「入らないでね」と念を押してから、扉を閉めた。仁は、みのるがなかなか出てこないので、自分の部屋に戻って着替えた。
(あれ?こんなアザ昨日あったっけ?)
左胸の下辺りに見慣れない赤いアザができていた。小さいアザだしどっかでぶつけたのかも、と仁はあまり気にすることなくそのまま着替えた。


二人の準備が終わり、今はみのるの部屋で朝食を摂っていた。
「けど、本当に毎食もらっていいの?」
仁は、焦りながら聞いた。昨日、話が最高潮に盛り上がると、みのるが調子こいて「毎日食べにおいでよ」と勢いで言ってしまったのだ。けれど、生活費は研究所が出してくれるのでそれほど問題ではなかった。問題なのは、毎朝毎晩同い年の、しかも異性と一緒にいることである。思春期のみのるにも考える部分はあって、やっぱり少し照れくさくなってしまう。
(仁はあんまり気にしてなさそうだけど……。)
そんな考えとは裏腹に仁も少し考える部分はあり、昨日も結局夜に目が覚めてしまった。みのるには「ぐっすり眠れた」と伝えたが本当は、意識しすぎて眠れなかったのだ。


「じゃあ学校行ってくるね」
仁とみのるは研究所を出た。歩いていると二人の行く方向はほぼ同じで、結局二人で途中まで行くことにした。
「ところで、みのるの学校ってどこ?」
仁の問いにみのるは「花山中学校」と短く答えた。登校時、誰かと一緒に歩くのがなんだか新鮮でみのるはなんだかドキドキしてしまう。チラッと横を歩く仁の顔を見てみる。意外なことに仁は驚いたような顔をしてみのるの方を見ていた。
「学校同じじゃん!」

***

(なぜ今まで気付かなかったのだろう……。)
とみのるは心で呟いた。仁と同じ学校ということから驚いていたのに、同じクラスだったのだ。「どんだけ影が薄いんだよ!」と二人で冗談を言いながら教室に入ると、クラスがざわめき出した。それは、良いざわめきではないことは二人ともすぐに分かった。二人に寄ってくるのではなく、何人かで集まってヒソヒソと小声で話しているのだ。みのるは、訳が分からなくなって居心地の悪い教室から逃げ出した。

「あーあ、サボっちゃった……。」
流れる雲を見ながら、みのるはポツリと呟いた。あの後、教室に戻ろうとしたがどうしても勇気が湧かなかった。衝動的に飛び出したは良いが、戻り方がわからなくなってしまったのだ。悩んでいると、屋上の扉がガチャッと開いた。
「教室戻ろ?俺、みのると弁当食べたい。」
と仁が息を切らしながら言った。四時間目終了のチャイムが鳴ってからまだほんの数秒しか経っていなかった。仁は走って迎えにきてくれたのだ。みのるは、さっきまで悩んでいたのなんか嘘みたいに嬉しくなった。
「うんっ!」