銃刀法がなくなった!

ターゲットの入る部屋はスナイパー役が入る部屋より一段下にあるため、みのるは少年と握手をしてから階段を上がった。 オドオドしながらも、少年はターゲット位置に着いた。みのるもライフルをセットすると、銃口を少年に向けた。
「準備はいい?いくよ。」
みのるが大きな声で合図すると、少年は少し震えながらも小さく頷いた。
(この仕事はじめてなら仕方ないか。)
と思いながら、心臓にピントを合わせる。しかし、少年は突如その場に崩れ落ち、ガタガタと震えだした。みのるは慌てて、少年のいるターゲット部屋に行った。さっきまでの可愛らしい顔はどこにも無く、自分の体を小さく丸め大粒の涙を流していた。
みのるは、その姿にどう声を掛けていいか分からず、少年の背中をさすった。

***

ようやく泣き止むと、みのるは少年を連れて場所を移した。もしも、他の研究員に見られてはこの少年はここでの仕事を辞めさせられるかもしれない。と考えたからだ。みのるは研究員一人一人に渡される個室へ招き入れた。少年はソファーに腰掛けると、静かに口を開き、
「僕の両親はこの施設で働いていました……」
といい、みのるにゆっくりと過去の話をしてくれた。

──八年前
少年、高島 仁がまだ六歳の頃、両親はHP研究所の研究員をやっていた。その頃、仁は両親の仕事を誇りに思っていた。それは、将来人々を救うであろうことを研究しているからだ。ある日、仁は両親に連れられて仕事の様子を見学しに行った。その日仁は初めて、まだ世界に広まっていないHPを母が薬のようにして飲んでいるのを見た。その頃は、研究所の人手が足りなく、HPを使った人体実験も交代制だった。その日はちょうど母が実験当番だった。銃を持った同じ研究所の人が銃口を母に向けて狙いを定めているところを仁は部屋の外からガラス越しに見ていました。まだ幼い仁にとってそれはとても恐ろしいことで、父の手を強く握っていた。
バンッ!という大きな音が響いた。仁は母の体に弾が食い込んだ瞬間をはっきりと目に留めた。母は血を流して倒れたが、その数秒後起き上がり、母は撃たれた部分を確認すると手で大きく丸をしました。仁は実験が成功したことを知り、とても安心した。戻ってきた母のいつも通りな状態を見て、HPという存在に仁は心を惹かれていった。
その後、時間があれば研究所に行き、いつも両親の傍につき実験を見ていた。そんな仁を研究員達は、いつも笑顔で迎えてくれた。そして、いつしか研究所は居心地の良い一つの居場所となっていた。
それが、両親を苦しめていたと仁が知ったのは、そんな生活が二年程続いた後のことだった。