「それで??海外初出店する店舗の企画からも外されたと。バカじゃないんですか??」


「……今、鼻で笑いましたね」


「とんでもないです。お気の毒に」


ニヤニヤしながら、書店主任の松嶋さんに冷たくあしらわれる。


再来月シリーズで発売予定で、先月、予約の受け付けを始めた商品の状況確認を兼ねて、大型書店に訪れた。


メールで来た注文品の在庫確認をしていたらしい。
最近は、店頭や電話での問い合わせだけでなく、ネット販売やメールでのそれも扱う。


それにしても、この人なんか苦手だ。
松嶋登哉(マツシマ トウヤ)。
あまり興味もないから詳しくは知らない。


ただかなり優秀らしく、29歳にして主任。


180㎝ありそうな長身。伸び掛けの、微かに茶色い髪を無造作にセットした、すっきり整った顔は幼さすら感じられる。


無駄に知的で見た目がすばらしくイケメンで、でもそのくせ猛毒を吐く。だから苦手だ。嫌いだ。


「世話ないですね。浮かれてるからですよ」


むうう。
返す言葉が見つからない。


踏まれて蹴られたのはそこにあったのだ。
私はといえば企画からは外され、彼は栄転し。会長のお孫さんと婚約したらしい。