しかもわざわざ竹下くんは松嶋さんの前に行き、


「お疲れ様です。デートですか?」


「あ…」


「竹下さんっ…!」


年下とはいえ取引先の社員なのでとりあえず敬語とさん付けにしていた。


止めに行こうとしたけれど足が早く、数歩遅れた上に人混みに遮られてしまって間に合わなかった。


「奇遇ですね」


「そっちこそ」


なんだこの空気は。
えもいわれぬ空気は。


「まだ仕事中ですよ僕は。これからまだ打ち合わせが残ってるんです」


「それは失礼しました。では僕たちは行きましょうか、飲みに。あっ、うちに美味しいお酒があるんです」


「えっ?えっ?いやあの私は…」


けれど竹下くんに、ぐいっと腕を掴まれ、引き寄せられる。


「待て!!」