「大丈夫、痛いのなんて一瞬だから。
頑張れ。」


いつも無表情な先生が柔らかく笑を見せるとなんだか緊張も溶けて気がつけば黒崎先生に手をとられていた。


駆血帯で腕を縛られ点滴するところを探す黒崎先生。


無理、怖い…。


「宗大押さえといて」

「りょーかい、ごめんね栞ちゃん。」



言葉は優しいのにがっちりと抑えられた手は動かせそうにない。


「やだっ、怖い…」



我慢してきた感情がポロッと口から出た。

あのトラウマ以来注射も点滴も無理になった。



だから貧血が悪化してるとわかっていても病院へ行かなかった。