朝、目覚めるといつもよりも静かなことに気がついた。

 遠くで聞こえる小学生の声も、1階のリビングから漏れるテレビの音も、
何もない。
もうすぐやってくる夏の前特有の蒸し暑さが梓奈を包んだ。

 両親はまだ寝ているらしい。
そういえば、昨夜「せっかくの6月31日なんだからだらだらと寝て過ごしたい」
と話していた。どうやら大人は疲れているらしい。ほとんどの大人たちは、この日を休息日に使っている。

 でも、高校一年生の梓奈にとっては、ワクワクと高まる気持ちを押さえられない。
 毎年、この日を楽しみにしている。だって、自分がしたいと思うこと、何をしたっていいのだ!

 梓奈はお気に入りの赤いTシャツに着替え、デニムスカートをはいた。そして鏡に向かって、こう言った。

「今日、告白する!」