とにかく、感動した。




吹奏楽部だというのもあって、観衆も多く、新入生はほとんどそちらに気をとられているようであった。




楽器を、吹きたい。




そんな衝動に、かられてしまった。




「…さすがだ」



後ろで声がした。




ふりむけば、田川君だった。



目が合う。



なあ、と口を開いている。




「…お前、………だっただろ?」




シャーーーーン!!



丁度シンバルのけたたましい音が響く。



わたしは、その言葉を聞こえないことにした。



そして、俯き、逃げた。






けどわたしは決断してしまうんだ。



きいてしまった、この演奏を。




やめとけばよかった、この演奏をきかなければよかった、そう思うのは…まだずっとあとの話。