「旅行に行くぞ」

古賀くんは帰宅とともにネクタイを解くと、ビジネスバッグから旅行のパンフレットを取り出した。

「……旅行?」

いきなり旅行とはどういうこと?

パンフレットを見ながら首を傾げると、古賀くんはいかにも楽しそうに言った。

「来週の連休、休みがとれそうなんだ」

来週は土日月と出掛けるにはもってこいの3連休である。

結婚以来、土日祝日ほぼ休みなく働いていた古賀くんが休むとは珍しい。

「海外はさすがに無理だが、せめて国内くらい連れてってやらないとな。結婚式も後回しになってるからな」

「結婚式と旅行がどう関係しているの?」

「バカ」

古賀くんは私から取り上げたパンフレットを丸めて、コツンと頭を叩いた。

「……新婚旅行に決まってんだろ」

(新婚旅行……!!)

結婚準備期間の間もデートらしいデートをしてこなかった私達にとって、これは一大事である。

耳慣れない響きに戸惑いながら、何とかパンフレットの中から旅行先を選ぶ。

かくして、私達は2泊3日の新婚旅行に出掛けることになったのだった。