「どうしたの?今日は調子が悪そうじゃない?」

隣のデスクの真彩さんが、うんうん唸っていた私の様子を窺うように小声で話しかけてくる。

入社以来、真彩さんにはお世話になりっぱなしだが、こればかりは相談できない。

「……大丈夫です」

(私……古賀くんに何かしたっけ……?)

最後に古賀くんに会ったのはそれこそ10年以上前、中学の卒業式以来のはずである。

それが再会してすぐいきなり結婚って何を考えているのか。

新手のジョーク?それともドッキリ?

まさか本当に結婚相手に困っているとか……?

(いやいや、ないない。まさかそれはないよね?)

自分で思いついたくせに、ついぷっと噴き出してしまう。

青年として立派に成長した古賀くんを周りの女性が放っておくはずがない。

彼に嫌われていると分かっていても、髪に触れられ、見つめられるとドキリと胸が高鳴った。

もし、仮に古賀くんが結婚相手に困っているとしても、私を選ぶなんてさすがに幼稚すぎる。

中学校の時のノリをいつまでも引きずっているとしたら、結婚してもうまくやっていけるとは思えない。

どちらにせよ本気にしてはいけない。

きっと直ぐに手痛いしっぺ返しを食らうのだから。

“あんな冗談を真に受けるなんて本当にグズだな?”

(うわあ……古賀くんなら言いそう……)

予想以上の再現度の高さに思わずげんなりした。

やっぱり古賀くんって結婚に向いてないんじゃないのかな?