(古賀くんのバカ……!!)

こんなに好きにさせたくせに、あっさり放り出すなんてひどいじゃないか。

(責任取ってよ……!!)

最初に結婚しろって迫ってきたのはそっちじゃない。

(最後まで責任取ってよ……)

これから一人で生きていかなければならないという事実に打ちのめされ、ぐすっと鼻をすする。涙で滲んで前が見えなくなる。

視界に入るものすべてにピントが合わなくなる中、駐車場から歩いてくる彼の姿だけが鮮明になる。

「ひとりで……どこに行くつもりだ?」

「古賀く……」

「また泣いてたのか?懲りないな、お前も」

ひどい言い草である。

……誰のせいで泣いていると思っているのか。

「帰るぞ」

「あ、の……」

「荷物はそれだけか?貸せよ」

古賀くんは荷物が入ったバッグを強引に持ち去ると、車の後部座席の座面に置いた。

「乗れよ」

そう言う彼に従う義務はないというのに、私はどうしても逆らうことが出来なかったのだった。