「青山さん、具合はどうですか?」

「あ、はい……。すっかり良くなりました」

あれほど不快だった吐き気が、綺麗さっぱりなくなっている。

看護師さんは血圧を測り、点滴を調節するとお大事に言って病室から出て行った。

私は枕元のネームプレートをチラッと流し読んだ。

“青山さくら”

……これが古賀くんの位置から見えていないはずがない。

「どういうことだか説明してもらえる……?」

彼が間違いを指摘しないということは、青山姓が正しいと認識しているからだ。

「どうして私達……結婚していないことになってるの?」

「区役所に行ったんだな……?」

私はゆっくりと頷いた。

「結婚して随分経っているのに、婚姻届がまだ受理されてないなんておかしいよね?」

古賀くんは何も答えない。

ただ、何かを言いかけては止めるばかりで、私に明確な理由を示してくれない。