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仕事が終わり帰宅すると、今朝方は何の変哲もなかったリビングに所狭しといくつもの紙袋と包装箱が並べられていた。

「これ、どうしたの!?」

紙袋の数に圧倒されながらその調達先と目的をソファに座っていた古賀くんに尋ねる。

「知り合いのスタイリストに見繕ってもらった」

見繕ってもらったって……カラフルな色合いといい、その生地感といい、女性物のドレスにしか見えない。

まさかとは思うが、一応確認してみる。

「古賀くんが着るの……?」

「俺に女装の趣味はねーよ」

分かり切った質問をするなと、デコピンと一緒に軽いお小言をもらう。

「……お前が着るに決まってんだろ」

「私……?」

見繕ってもらったところで、ドレスを着る用事も行く先にも心当たりがない。

デコピンされた額をさすっていると、古賀くんは更に続けた。

「専務就任祝いのパーティーをやることになった」

「私も行くの……?」

「お前以外に他に誰が行くんだよ」

古賀くんはぶすっとしかめっ面で、けしかけるように私の頬を抓った。

「目一杯着飾れよ。俺の妻に相応しいくらいにな」

「ひゃい……」

これは……責任重大である。