「さくら」

古賀くん愛用の香水の香りが鼻をくすぐったかと思えば、既にその腕の中にすっぽりと納まっていた。

「その……なんだ。この間は色々と悪かった。あいつらがごちゃごちゃ五月蠅くて苛立ってた」

あまのじゃくの彼なりに誠意を見せようとしているのだろうか。

「もっと美人で可愛げのある人と結婚すれば良かったんじゃない……?」

「拗ねるなよ」

違う。拗ねてなどいない。

自分自身が美人で可愛げのある存在になれないことに、軽く失望しているだけだ。

子供じみた感情を古賀くんに押し付けたいわけではないでもない。

古賀くんはさらに強く、強く私を抱き寄せた。

「昔のことを怒っているなら謝る。だから……もう二度と嫌いって言うなよ」

なんで今さら謝るの……?

今さら謝られたって困るんだから。

古賀くんがしてきた行為は謝ったからといって許せるものではない