(困ったわ……)

これでは当てが外れてしまった。

古賀くんが行かないのなら私ひとりで大手を振って出掛けられると思ったのに。

「っつーか、むしろ一緒に行くか?その方が説明する手間も省けて、色々と手っ取り早いだろ」

そりゃあ、古賀くんにとっては有象無象の言うことなんて馬耳東風、屁の河童なんでしょうけど……。

“マジでグズだな、お前”

ふと昔の苦い思い出が蘇ってきて、ぎゅうっと拳を握りしめる。

「……嫌」

「あ?」


「絶対に嫌!!結婚していることは誰にも言わないで!!」

……私は古賀くんとは違う。

悪口を言われたらすぐに傷ついてしまうし、心無い噂にだって過剰に反応してしまう。

人の顔色ばかりを窺って言いたいことも言えない私の気持ちを古賀くんが理解してくれるはずがない。

「同窓会には行くけど……しいちゃんと一緒に行くから」

私はそう言うと、古賀くんの書斎から弾かれるように飛び出したのだった。