「おじいさんの具合はどうなんですか……?」

「大したことないのよ?暑気あたり、つまりは夏バテね。すぐ退院するわよ」

お義母様そう言うと、さして気にすることなく病室の扉をノックした。

「入りますよー」

そして、怒鳴り声という弾丸が飛び交う戦場を無傷で通り抜けると花瓶を枕元に置いた。

「なんだ、来てたのかよ……」

古賀くんは私の姿を見ると、気まずそうに目を逸らした。

おじいさんと喧嘩を私には聞かれたくなかったのだろう。

「俺はまだ仕事が残ってるから帰るな。お前も用が済んだらさっさと帰れよ」

古賀くんは気休めのように、ポンと私の頭の上に手を置くと病室から出て行ってしまった。

忙しい最中仕事を投げ出してまで、見舞いにやって来たのに果たしてそれで良いのだろうか。

「やっと帰りおったか……」

こちらはこちらでまだ、怒りが収まらないようだ。