「いらっしゃい、さくらちゃん!!待ってたわよ」

古賀家のお義母様は私の来訪を喜んでくれて、わざわざお手製のクッキーを用意して待っていてくれた。

「これ、旅行のおみやげです」

温泉地が刻印された温泉まんじゅうをお義母様にそそと渡す。

新婚旅行から帰ってきた翌週のこの日、私は実家、かすみの家、そして古賀家にお土産を配り歩いていたのだった。

「眞琴とふたりで温泉に行ったんですって?」

「はい」

「我が子ながら甲斐性のない男ね。新婚旅行に行くならもっといいところがあったでしょうに……」

「温泉、楽しかったですよ。ゆっくりできましたし」

本当に楽しそうだった。……主に古賀くんがだけど。

何を食べたか、どこを観光したとか旅行の話がひと段落すると、お義母様は私達の近況について詳しく知りたがった。

「ねえ、眞琴にいじめられてない?あのこ、ひとりっ子でしょ?私の育て方が悪かったのか、我儘放題に育っちゃって……。何かあったらすぐ言ってちょうだいね?」

不出来な息子をというよりは、そんな息子に嫁ぐことになってしまった私のことを心配しているようだった。