ドクターと恋を始めました。【完】




『こら、何度言わせる気?琴音のせいでお母さんは死んだんじゃない。飲酒運転をしていた運転手が悪いの。』


「…そ、それでも、あたしが悪いの!

あたしがお母さんの未来を無くしてしまった。
結局は、あたしは人殺しなの!」



お母さんの、明日も、明後日も、未来も、あるはずだったのに無くした。


小さい頃から時々思っていた。


───── 何故、お母さんがいないのだろう。



周りの人達には優しく温かな存在がいて、
何故、あたしはいないのだろう。



『…ごめんね、琴音。あの時からずっと責めら続けて辛かったわよね。

─── そばにいてあげられなくてごめんね。』



お母さんは、あたしにそう言いギュッと優しく抱きしめてくれた。



『でもね、今の琴音には愛してくれる人がいるんじゃないの?』



今のあたしを愛してくれる人?



「…そんなの、いないよ。いたとしても同情にすぎない。

─────── もう、誰も信じれない。」



信じることなんて、できない。

違う、信じることが怖い。



『琴音は何に怯えてるの?』


「…もう何も失いたくない。生きていることが辛いのに…ッ……神様って意地悪だっ。」



涙が勝手に溢れて、あたしの頬に流れる。