浅葱色の涙

部屋に入っても2人の距離は微妙に開いていて


重い空気が流れていた。


「あ、あの平助くん…?」


ーーーーシーン


声をかけても返事はない。


怖い…。恐怖と不安ばかりが募る。


「紫乃…。」


ーーービクッ


「は、はい…。」


思わず敬語になってしまう。


「なんの仕事だったの?」



「そ、それは…。」


土方さんに黙ってろって言われたから言えない…。


「言えないの?」


「ごめんなさい…。」


「はぁ…。」


大きなため息が部屋に響く。



平助は紫乃に背中を向けて座っているため表情が全く見えない。



「ごめん…なさい。平助くん、ごめんなさい。」


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side平助


「ごめん…なさい。平助くん、ごめんなさい。」



「紫乃…?」


振り返ると紫乃は俯いて震えていた。


「紫乃…!」


肩を掴むとビクッと揺れる。


ハッとした。


紫乃が今にも泣きそうな顔で…





笑っていたから。





「ごめんなさい…。」



バッと肩に置いていた手を離した。



「ごめん、紫乃。怖がらせて…。


紫乃が急にいなくなって心配だったんだ。


怒ってない。」



紫乃の目を見て言った。


「ほ、んと…?」


「うん。」


「よかっ、た…。」


そう言うと紫乃は少しだけ微笑み


そのまま平助の方へ倒れた。


「わぁ!紫乃!?」


ーーースー、スー…


「ね、寝てる…?」


仕事って言ってたからな…。疲れたんだろう。


ごめん、紫乃。


紫乃が急にいなくなって本当に心配だった。


いや…、怖かった。


紫乃に隠し事されるのが嫌で、悔しくて紫乃に当たってしまった。



そのせいで紫乃を怖がらせた。



紫乃がここに来る前何かあったことは間違いない。



その傷を癒してやりたいのに…


本当にごめんな…。