フッと笑いながら慎おじさんは言った。


『あそこまで聞かれちまったからな。
特別に、教えてやるよ。


俺は農家なんか嫌だった。農民なんて低い地位も嫌だ。


それなのに弟のあいつはいいところへ婿に行って俺より裕福な暮らしをしている。


ずっと、気に入らなかった。


そしたらなぁ、長州の役人がお前らの噂を聞いて訪ねて来た。


長州はその力が欲しいらしくてなぁ。


一族で1番力の強い紫乃。お前を連れて来たら役人に取り立ててくれるって言うんだ。』


笑みを浮かべたまま言うおじさんが憎くて仕方なかった。


『…じゃあ、長州が襲ってくることも…。』


『あぁ、知っていたさ。お前らが逃げてくることもな。』


…っ!!!


『拷問したのは…』


『あれは、長州に連れて行く前に本当なのか確かめろと言われたからだ。


だけどお前らがしぶといからな。


長州のやつらもしびれを切らしたらしく連れて来いと命が下ったんだ。』


…憎い。


『お前は、自分の欲のために亜弥さんと紫音を殺したのか…っ!』



目の前にいる男が、憎くて仕方ない。


『あぁ、そうだ。俺はあんな暮らしから早く抜け出したかったんだ。』


腹の底から何か、湧き上がってくるのを感じた。


『安心しろよ。お前は殺さねぇからよ。



大事な商品だからな。』


そう言って私の腕を掴んだ。


その腕を振り払い、刀を奪った。


『な、返せ!』


許さない…。亜弥さんを、紫音を殺したお前たちを!!