「今日は一緒に寝よう」


どうやら処置室に寝かされていたようで、落ち着いた私たちに気付いた看護師さんが中に入ってきた。よく分かっていなかった私はそこで漸く自分の腕に点滴が繋がっていたことに気付く。都築さん、と優しく名前を呼ばれて、ぱっと顔を上げると様子を見に来た看護師さんは羽村さんだった。


落ち着きましたか、と問われてこくりと頷く。私の謝罪に緩く首を振って否定すると、気を付けてくださいね、と私と真空を病室に送り出してくれた。


最初はいたはずのお母さんの姿がなくなっていることに気付いて、辺りを探す。帰ったよ、と言う真空に視線を向けると、「俺に任せてくれたんだ」という回答が返ってきた。


「泣かせてくれって頼まれてた。一回も泣いているところを見てないから、って」

「……そ、っか」

「あとで、お母さんにもちゃんと伝えなよ、雫」


うん、と素直に頷いて、真空と二人、狭いベッドに横になる。近くに感じる真空の体温に安心して、私はすうっと眠りの国へ旅立った。






その出来事をきっかけに、私は漸く周りを頼ることを覚えるようになった。


私は真空の様子を見に病院に行くから、おばさんに家のことを頼んで、お母さんに真雪ちゃんの捜索を頼んだ。悩んだ末に、大学は休学届を出して、真空の傍にいられるようにした。


今この時間はどれだけ悔やんでも戻ることはない。勉強よりも、今は真空が大切だった。




それから二か月後、真空は呆気なくこの世を去った。




もう見込みはないから、と自宅療養に切り替えてからすぐのことだった。朝起きると、隣の真空は息をしていなかった。救急車は呼ばないで、と言っていた真空の意見を尊重して、もう諸々の手配は済んでいた、その直後だった。


その後のことは、正直よく覚えていない。身内だけのひっそりとしたお葬式を上げて、真空のいなくなった白川家に帰った。真雪ちゃんは、結局見つからなかった。泣くことすらできずに、私はただただ過ぎていく毎日を何となく生きているだけだった。


真空がそんなことを望んでいないことは分かっていても、どうすればいいのか分からなかった。おばさんたちもお母さんたちも、無理にどうにかするのではなくて私の好きにさせてくれた。