「苦しいよ辛いよ、だって真空が、まそらがいなくなっちゃうのに……っ、分かってるけど、分かってたけど、真空に言っちゃいけないって、真空に辛い重いさせたくなくて我慢して、でもずっと辛くて、誰にも言えなくて、言ったらどうにかなっちゃうのが怖くて、ずっとずっと、私が頑張らなきゃって思って、気持ち全部押し込んで、っ! ……どうして、まそらは死んじゃうの……っ! 置いて逝かないでよお……っ」


とんとん、と真空の腕が私の背中を一定のリズムで叩く。いつの間にか、やせ細って折れそうに細くなってしまった腕。その腕に更に辛くなって、悲しくなって。こんなこと真空に言いたくないのに、真空に一番聞かせたくなかったのに、私の言葉はもう止まらない。


「分かってても辛かった! でも受け入れられない自分が嫌で、だから言いたくなんてなかった……! 誰にも心配かけたくなくて、心配かけないようにしようと思って、受け入れられたように振る舞って、でも全然受け入れられなくて、違うの受け入れたくなくって。段々細くなっていく真空が怖くて、目を覚ましてくれなかったらどうしようと思って、怖くて、でも言えなくて、言ったらそうなっちゃいそうな気がして怖くて、苦しくて、だから忙しくしてれば考えなくて済むんじゃないかと思ったけどそうもいかなくて、真空ごめんね、ごめんなさい、大好きだから、愛してるんだよ、でもだから怖いの、ずっと一緒にいたいの……っ」


その後は、もう言葉になんてならなかった。


みっともなく真空に縋り付いて泣いて泣いて泣いて。その間、ずっと真空が私の背を、頭を撫でてくれていて。その手の温かさに、触れ合う体温に、酷く安心して、酷く苦しくて。


どうして私は受け入れてあげられないんだろう。一番苦しんでいるのは、他でもない真空なのに。その真空に全てをぶつけて私は一人安全地帯で泣いている。そんな自分が情けなくて、でももう涙を止めることなんて出来そうになかった。


「ねえ雫、一人でどうにかしようなんて無理なんだよ」


ぼうっとする頭に、真空の声がするりと入り込んでくる。他の音はよく聞こえないのに、真空の声だけははっきりと。


「そうやって壊れちゃうのが、俺は怖いよ。病気のことを受け止められないのは、雫が責めることじゃない。そんな簡単に受け入れられるものじゃないんだから、焦って頑張ろうとしないで。お願いだから、俺のために、頑張らないで」


こくり、と頷く。涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると、真空と視線が合った。優しく私の前髪を払った真空が、そっと涙を拭う。すっきりした? と問いかけられて、少し、と答えると柔らかく笑われた。