「……何となく、分かってた。真白くんが、重い病気なんじゃなかってことは」
「……え?」
溜め息を吐くように押し出されたお母さんの言葉に、小さく呟く。疲れたような笑顔を見せたお母さんが、続きを口にする。
「様子を見てたら何となく。それに、今日の減塩食で確信したの。まさか話してくれるとは思わなかったから、失礼な反応してたらごめんね」
「……いえ」
「雫は幸せね、こんなに想ってくれる人がいて。……お母さんは反対しないよ。真白くんがいい子なのは分かってるから。後悔しないようにしなさい」
「お、かあさん」
いいの、と確認するために発した声が揺れているのは分かった。私ばかりが握り締めていた手が、真空に握り返される。こくり、と頷いたお母さんに、つうっと涙が零れていくのが分かった。
「……お父さんは」
ぽつりと呟いたお父さんに、視線を向ける。難しい顔をしているお父さんに、ぎゅうっと唇を噛み締める。
「雫が、どう思っているのか聞きたい」
「私も!」
お父さんの言葉に、反射的に声を張り上げた。驚いたように目を見開いたお父さんに構うことなく、さっきから思っていた言葉たちは唇の端から零れ落ちていく。
「私だって真空が好きだよ! 真空ばかりが私を好きみたいな言い方するけど、私だって真空が好きで好きで大好きで大切で、離れたくないし別れたくないし、っ最期まで、一緒にいたい……っ」
君ばかり私のことを好きみたいな言い方をするのは、卑怯だ。
「最初から真空の病気のことは知ってた。それでも真空が好きになった。私は真空が好きなの、だから長く生きられないとか、病気だから制限がいっぱいあるとか、そういうの関係ないっていうか、そういうの含めて真空で、私はそんな真空を好きになったの」
全部ひっくるめて、真空は真空。気まぐれで、笑顔が優しい君を、私は好きになったんだ。
ぐうっと唇を噛み締める。真空に優しく手を撫でられて、昂った気持ちを落ち着けるために息を吐く。難しい顔に戻ったお父さんにしっかり視線を向けると、諦めたような溜め息を吐かれた。
「……分かった。そこまで言うなら、後悔ないように好きにしなさい。ただ、ちゃんと責任は持つように」


