「お父さんとお母さんに、話があります」
「まさか子供でもできたのか!?」
「ばっ!? 違うってばお父さん大人しく真空の話聞いたら!?」
「……すまん」
お父さんの言葉に顔を赤く染めて反論した。立ち上がる勢いだ。というかまずそういうことをしていない、というより、できない。
真空が隣で私を宥めてくる。はあ、と溜め息を吐いて、気持ちを落ち着けた。
「とりあえず、話を聞いて欲しいんです。文句はいくらでも聞きますし、別れろって言うなら別れます。でも、俺は雫のことが大好きなんです。雫と最期まで一緒にいたいと思ってる、それだけは分かってほしいんです」
「分かったから、話してみな、真白くん。大丈夫、お父さんは私が押さえておくから」
「……すみません」
ちょっと緊張した様子の真空の手を、お父さんたちに見えないところでそっと握った。ふ、と頬を緩めた真空が、私を見て小さく頷く。大丈夫だよ、と囁くと、分かってる、と小さな囁きが返ってきた。
「単刀直入に言います。俺の命は、もってあと五年もありません」
お父さんとお母さんが固まるのが分かる。辛い現実を口にする真空の手を、ぎゅっと握り締める。
「正直、今生きているのも奇跡なくらいだと、主治医には言われています。俺はいつ死ぬか分かりません。それでも、二十歳がボーダーだと言われました。それを越えても、大丈夫な保証はない。治療法がないから、今はその場しのぎの対応しかしていません。こんな身体で、雫さんを好きになってしまって、本当にごめんなさい」
ねえ、謝らないでよ、真空。
「でも俺は雫が好きです。別れますって言ったけど、本当は別れたいなんてこれっぽっちも思ってない。雫は俺の生きがいなんです。結婚したいと思うほどに」
まそら。
「どうしようもないくらい、雫が好き。いつどうなるか分からない身だから、本当は告白しないつもりでした、でも。好きなんです、本当に。大好きなんです……っ」
「泣かないで、真白くん」
お母さんが、笑う。ぱたぱたと真空の頬を滑り落ちる涙に、ごめんねと思う。
辛いことを言わせて。真空が、死にたくないと思っていることはよく知っているから。それなのに、現実を見させてしまって、ごめんね。


