「映画観終わったら家行く?」
「うん。嗚呼でも、お昼どこかで食べていった方がいいか」
「多分今のうちに頼めば作ってくれるけど……減塩、だもんね、あまり外食したくないでしょ?」
「……まあ正直。頼んでもいいかな。今日、全部、話すよ」
分かった、と返事をして、お母さんに連絡を入れた。返事がいつ来るかは分からないのですぐに電源を落とす。予告が始まると二人して口を噤んで、映画が始まるのを待った。
映画はとても楽しかった。映画化って失敗するものもあるけれど、これは成功例だと思った。
二人でわいわいと映画の話をしながら駅へ戻る。立ち上げたスマホにはお母さんの了解の返事が入っていて、真空に伝えるとほっとした顔をしていた。
何度か家に来たことはあるし、お母さんに遭遇したことはあるものの、ご飯を食べることとお父さんに会うのは初めてなのだ。私の方は何故か何度かご一緒させてもらっているのだけれど、お母さんの方もそれがあるから気にせずに許可を出してくれたのだろう。
最寄駅に着くとお父さんから連絡が入っていて、どうやら駅まで迎えに来ているという。真空に言うと、安心していた表情から一転緊張した顔になった。珍しい、あまり緊張しているところは見ないから。
「お父さん来てるのか。そうか。ありがとうございますでも心の準備まだだった」
「大丈夫だよ真空。別に取って食われたりしないから」
「まあきっと何とかなるよね!」
「流石」
緊張はするけれど切り替えは早いらしい。
多分こっち、と改札を出て真空の手を引く。ロータリーの端の方にお父さんの車を見つけて、軽く手を振った。長い時間の駐車はできないのでお父さんが降りてくることはなかったけど、車に乗った真空がよろしくお願いしますと言うのに、お父さんは頷いて車を出した。
「真白くんだっけ? 雫の父です」
「あーえっと、白川真空です。雫さんとお付き合いさせて頂いてます」
「お、おう、知ってる」
真空の容赦ない自己紹介に、お父さんがたじろぐ。朝からそわそわしていたので、どうして迎えに来たのかが謎だ。家で待ってればよかったのに。まあ、真空のことを考えるとありがたいのだけど。
「えっ何その反応。俺どう思われてるの?」


