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誕生日プレゼントに何が欲しい、とお姉ちゃんとお兄ちゃんから同時に聞かれて、私は一瞬悩んでからカメラが欲しい、と口にした。
十二月に入って数日。すっかり冷たくなった風に内心で文句を言いながら、私は通い慣れ始めてしまった道を一人歩いていた。
私の誕生日は十二月の中旬だったが、クリスマスプレゼントと一緒にされることはほとんどなかった。というのも、兄姉は大分歳も離れていてバイトやら仕事やらをしていたので、兄姉からは誕生日、両親からはクリスマスと役割分担が自然と出来ていたのだ。流石にカメラなんて少し高いものをねだった私にお兄ちゃんは驚いたようだったけれど、お姉ちゃんは何かを悟ったような笑顔で任せておいて、と承ってくれた。
お姉ちゃんはきっと勘違いしている、と思いながらも訂正はしていない。私が撮りたいのは猫の写真であって、決して真白くんとの写真というわけではないのだけれど。なんとなく、そのままでいいかと思って放置してしまっている。
当の真白くんは、秋に入院して一度退院したものの、つい先週からまた入院になっていた。あまり芳しくないらしい。お見舞いに行くと全然そんなことはないのだが、それでも入院しているということはきっと隠されているんだろうなと気付きながらも、私はどうすることも出来ないでいた。
踏み込んでいいのか、わからない。一度真白くんの本音には触れたけれど、それ以降はさっぱり。友達だと思っていたらできたかもしれないけれど、好きだと自覚してしまったからにはやっぱり気が引けてしまった。
せめて私には言えなくても、お母さんやお父さん、柳くんにくらい入っていればいいと願うことしか、私にはできない。それがもどかしくて、でもどうにもできない気持ちを私はここ数日持て余していた。
「まーしろくん」
「あ、都築さん! 待ってた!」
「お邪魔します、はいこれノートのコピーね」
「わーいアリガトウ」
「棒読み感満載だね」
慣れたように受け付けを済ませて病棟に向かい、声を掛けてカーテンを開ける。待ってました! と笑顔を向けてくる真白くんに笑顔を返しながら、恒例となったノートのコピーをまず渡して。
それから続いて取り出すのは、これもまた恒例となっている小説の貸し出しだ。どうやら読むジャンルの似通っているらしい私と真白くんは、前回の入院をきっかけによく本の貸し借りをするようになっていた。


