気まぐれな君は



そろそろ子猫たちの写真を本格的に撮らなければ。お金でも溜めてカメラでも買って、現像したら真白くんは喜ぶかな。そうしたら、真雪ちゃんとのツーショットも取ってあげたい。入院自体は慣れているようだったけれど、真雪ちゃんと会えないのは大分寂しそうだったから。


「楽しそうだね、雫」

「そうかな?」

「楽しそうだよ。いやあ恋の力ってすごいねえ」

「ちょっと茉莉!」

「というか、そういう茉莉はどうなの?」

「あたし、彼氏いるよ?」

「ええ!?」


四人でじゃれながら昇降口へ向かう。靴を履きかえて、向かうのは駅。その間に衝撃の事実が発覚し、三人で揃って声を上げた。


「あれ? 言ってなかったっけ?」

「言ってない! 聞いてない!」

「じゃあ今言った!」

「嘘でしょ茉莉に彼氏がいる、だって……!?」

「ねえちょっと若葉失礼じゃない? あたしのことなんだと思ってるの?」

「え、親友?」

「なにそれ嬉しいありがとう、ってごまかされないからね?」

「ちっ」

「舌打ち! この子舌打ちした!」


わいわいと騒ぎながら四人で歩く通学路は、いつもとは違う景色に思えてくるから不思議だ。真白くんと歩く道とは違う顔。それでも、このところ真白くんのことばかりだった私には、少し安心できる空気だった。


「てか絵里はなんでそんなに驚いてないの!」

「えー、だってなんかいそうだなあとは思ってたというか、いてもおかしくなさそうだなって思ってたっていうか」

「分かってたなら言ってよ!?」

「いや分かってはなかったけど、ふーんそっかって感じ」

「だったらいっそ若葉みたいに騒いでくれた方が反応が楽しい」

「人に楽しさ求めないでくれる?」


ふっと吹き出して、治まらない笑いの衝動をどうにか噛み殺そうとする。しかし一度ツボに入ってしまったものは早々抜け出せない、お腹を抱えて笑い出した私に、「そんなに笑うところあったっけ!?」と更に騒ぐ茉莉が面白くてもっと笑いは止まらなくなる。


真白くんと一緒も安心するけれど、この雰囲気も別の意味で安心すると思いながら私は滲んできた涙を拭った。